金
15
4月
2011
外壁タイルの検討するために京橋のショールームにやって来た。1階の受付は窯業会社らしく粘土細工のように壁は室内を自由にうねり、その表面は清楚で白いモザイクタイルが張られている。
タイルのサンプルが並べられたフロアーに着く。10年前に来た時よりもすっきり広々としている。展示されるタイルの見本が格段に少なっている。係員に二丁掛けタイル(227×60mm)はこれですべてかと聞くと、これで全てだという。以前の3分の1位だろうか、ずいぶん少なくなった。あの頃は他の案件で特注で作られたものも展示され、先人たちの工夫やアイデア・こだわりにずいぶん触発されたものだった。
すでに候補に挙っているタイルを手に取ってみる。
カタログの写真やサンプルのタイル1枚では判断できることは少ない。カタログは印刷物なので色についてはあてにならない。素材感も伝わらない。アメリカのある高名な建築家は材料の素材感を確かめるためにサンプルを頬にあてて判断したそうだ。そこまではしないまでもさすって・叩いて・横からも裏からも見る。手に取って初めてわかることが多い。そしてタイルであれば焼ムラや色ムラは起こり得るので、複数のサンプルを見てそのムラの幅を確かめる。
なによりショールームは蛍光灯をベースにしているので、ここで色合いを確かめることはできない。それは光を構成しているスペクトルが太陽光に比べ蛍光灯は光の色が極めて少ないため、に建物が建ったときに異なって見えるからだ。
他に検討できるタイルがないか探してみる。しかしない。選択肢が極めて少ない。タイルの今昔を光のスペクトルに例えると、かつてのタイルは太陽光のように種類も製法も豊富で選ぶのによく迷った。一方今のタイルは蛍光灯のように種類は少ないく、どれで妥協するか迷う。
タイルの種類が少なくなった背景には、建物の外壁にガラスやサイディングが多用され、またトイレやキッチンもタイルに変わって石やボード・パネルにとってかわられた。メーカーも採算をにらんで売れ筋商品に絞るようになったそうだ。
候補のタイルの製法について係員に尋ねる。分からないので上司が来るという。そこに現れた人はかつて私が勤めていた頃に数々のプロジェクトを担当されたS氏であった。その頃からタイルのについては絶対の信頼をおいていた。タイルの製法・素材・工場などなど頭に入っている。
そして私の急な来訪にも懇切丁寧に対応して下さった。いろいろとアドバイスやアイデアを頂く。数少ない中からではあるが妥協できるものを選ぶことができた。S氏の配慮の賜物である。
私はS氏のことをタイル・コンシェルジュと勝手に呼ぶことにする。
館内には近頃完成した有名和菓子店のために特注で作られた外壁タイルが展示してあった。「和菓子のようなタイル」を作るために試作を繰り返した特注タイルである。メーカは建築家に費用がかかることを確認したら、コストは関係ない。と言ったそうだ。その費用は石張り以上だったそうな。私は石よりもコスト以上のいいものができあがったと思う。