2016年4月に旅館業法の一部改正によって、10人未満の小規模な簡易宿所は規制が緩和されています。
旅館業法は国が定める法律ですが、それに加え各自治体は独自の条例を定めています。
さらに、東京都では区市町村で独自に設置基準を定めていたり、独自のや申請手続きを行うところもあります。
区によっては宿泊施設(旅館業法のホテル・旅館・簡易宿所をまとめてここでは呼ぶことにします)そのもののを規制しているるところもあります。
旅館業法の営業許可の申請は、各自治体の保健所が窓口になります。
保健所に行けばすぐに営業許可を申請できるわけではありません。
申請の前に保健所・建築審査担当(呼称はいろいろあります ここでは建築審査課と呼びます)・消防署で意見を聞いてからそれを反映させて、申請が可能になります。
以前であれば保健所のみで営業許可が出されていましたが、建物の構造や使途、消防設備の不備等の人的被害による重大事故を機会に、違法建築ではないこと、消防設備の設置・避難が確保されることを事前に行うことになりました。
事前相談では施設の平面図を作成して、それをもとに各所管と設計内容について協議します。
建築の専門的な知識と経験が必要になります。
営業許可は事業者に対して行われますので、事業者が変わると営業許可を新たに取得する必要があります。
ここで気をつけなければならないことは、現在営業許可を持っているから同じ施設で新しい事業者にも営業許可が容易に下りるわけではありません。
現在では保健所が建築審査課と消防署に照会して適法でなければ営業許可は下りない仕組みになっています。
保健所は法律・条例に定められた構造基準を満たしているか、特に衛生面についてチェックされます。
保健所は宿泊に関係のない人が施設に立ち入ることを嫌います。
たとえば、ビルの一部を宿泊施設に運用しようとすると、階段・エレベータ等のセキュリティが厳しく指導されます。また、宿泊施設の一部が他の用途と共用することも嫌います。
東京都では区によって指導が異なることがあります。
例えば入浴施設の設置について、近くに銭湯がれば入浴施設は設けなくてもよいとされていますが、ある区では銭湯は閉鎖の傾向にあるとの理由から、入浴施設を持たなければならないことがあります。
入浴施設の数は適切な数とだけあるところと、ベッド数に応じて基準を定めているところがあります。
帳場を設け、必ずスタッフが常駐しなければならないところ、施設に出入りする時間を定めそれ以外はロックアウトすれば、スタッフは外部にいてすぐに駆けつけられればよしとするところがあります。
東京都の区によっては、許可申請の前に、地元町会に説明会を開いて町会から承諾書をもらってからではないと、営業許可申請もできないところもあります。
民泊に伴う住民からのクレームが急増しており行政も新たな対策を思索しているようです。
建築審査課では、都市計画法と建築基準法・自治体独自の条例に照らして建築可能か指導を受けます。
東京都では東京都安全条例があり、建築基準法よりも厳しい条件や具体的事項が定められています。
たとえば、2階の宿泊用途の面積が200㎡を超えると準耐火建築物以上にしなければならなくなります。
ちなみに法律の建築基準法では300㎡以上です。
他にも簡易宿所には窓先空地と呼ばれ、宿泊室の窓が道路または道路に通じる一定幅以上の空地に面していなければならない条件が課されます。
その他にも、基本的に路地状敷地(旗状敷地)には建設できません。
民間の審査機関にて確認申請する場合、用途変更の部分が200㎡以下で確認申請を要しない建物も、営業許可申請時 に保健所が建築審課に照会しますので、建築審査課の事前相談が必要になります。
消防署では、収容人数・使用設備によって消防設備・避難を中心に協議します。
保健所・建築審査課・消防署の事前相談を終えると、保健所に営業許可申請を提出することになります。
営業許可申請を受けて敷地から100m(東京都110m)以内にある児童が利用する教育施設・福祉施設があれば、その所管者に照会がいきます。
施設が風営法の適用を受けるものは基本的に許可されません。
自治体が定めた用途地域で、住居専用地域(第一種・第二種・低層・中高層)・工業地域・工業専用地域には宿泊施設は建設できません。
また、文教地区(第1種・第2種)においても建設できません。
これらはインターネットから「自治体名」と「都市計画図」をキーワード検索すると都市計画図を閲覧することができます。色分けされた地図を読みとります。
また直接建築審査課に問い合わせるか、窓口へ行けば教えてくれます。