ホステルのデザイン

ビジネスをデザインする

 オリンピックに向けた施設整備によって建設費は高止まりの感。建設費を押し上げているのは、土木向け建設資材のコンクリートと鋼材。コンクリートや鉄骨の影響を受ける新築では事業性が大きく左右される。

 一方、都心の地価も上昇が維持され、個人所有の小規模中古ビルが市場に増えている。特に確認申請と完了検査を済ませている物件は、用途変更が容易である。1年ほど前であればその類は外国資本に即刻買われていたが、今はその勢いは影を潜めている。

 同じ案件が異なる依頼者から数ヶ月おいて相談に持ち込まれる。売り主は変わっていて転売目的で買われたものが再び売りに出されたようだ。めまぐるしい。ホステルに用途変更して事業性が獲得できる物件は限られているので、転売収益が見込めるのだろう。

 

 時にお得意さんから不動産購入前に、「この物件だとベッド何台入りますか?、図面はいいので台数だけザッと教えてください。」と相談が入る。こちらとしては設計図を描いて生業ににしているので、図面はいらないと言われると困ってしまう。それに代わるサービスを作らなければならない。今はお得意さんには、本当にザッと見て、サックと応える。それでも事業性が微妙な時は、「あと○台入れられませんか?」と再度相談がある。時間と費用はかけられないので、送られている図面を整形して直接ベッドを入れて精度を上げてからお応えする。当然、法や条例・自治体の指導はクリアさせる。それと用途変更にかかる概算工事費を併せて。とりあえず事業性を見極めるには、いかに早く・より多く・合法的にベッドが入れられるかが鍵。

 

 物件の購入が決まれば、ホテルのルームミックスにならい部屋の構成を検討します。併せて旅館業法の「旅館」にするのか「簡易宿所」にするのか。それによって収容人員も設置可能な宿泊室の位置と大きさも変わってきます。各客室の収容人員は、旅館が3.0㎡/人に対して、簡易宿所は1.5㎡/人となり定員に差が出ます。とはいえ、保健所や消防書の指導でベッドの間隔や通路幅など規制があって、1.5㎡/人は中々実現できるものではありません。災害時の避難通路を確保することを考えると1.5㎡/人は好ましい数値ではありません。

 簡易宿所の場合、東京都では「窓先空地」といって窓からの避難が条例で定められています。窓先空地が取れないと宿泊室は作れません。道路は窓先空地の対象になりますので、敷地一杯に建てられているペンシルビルの場合は、簡易宿所だと道路に面した客室のみ認められます。

 

 最初の事業計画では、通常ドミトリー形式で相部屋、そこにベッドが最大いつく入るかが課題でした。宿泊施設の不足がまだ続くとはいえ、ビジネスホテルよりさらにグレードダウンしたホステルで、しかもドミトリー形式にいかに付加価値が付けられるかがテーマになります。付加価値がなければいづれ価格競争に陥ってしまいます。ドミトリー形式に付加価値をつけるとすればカプセルベッドにしてプライバシーを高めること。ホステル全体にテーマを持たせる手法があります。そのためのスペースの供出とデザインに規模と予算がないと逆に事業性を厳しくしてしまいます。テーマパークならぬテーマホステルが新たなマーケットを作り出すかも知れません。興味深々です。

 デザインが良くて好感が得られSNSで発信され話題になれば、事業性もあがるでしょう。しかし、気をつけなければならないのはデザインによるイニシャルコストの負担と、収益スペースを犠牲にして話題づくりに奔走してもそれは本末転倒です。ビジネスとデザインのバランスが肝要です。