旅館か簡易宿所か

旅館と簡易宿所の違い 概要

 現在運営している民泊から旅館業に変更されたい方や、これから宿泊業を始める方にとっては、旅館・ホテル・簡易宿所のどれにしようか思案中のこととでしょう。そこで旅館・ホテル・簡易宿所の違いとメリット・デメリットについてまとめてみました。

 

 法律上、旅館業法では旅館・ホテルは一緒になって、簡易宿所と区別されます。それぞれ構造設備基準が異なりますが、建築基準法と消防法では区別されずすべて同じ扱いになります。

 

 事業性で見ると、カプセルホテルや2段ベッドを並べたドミトリースタイルは、個室に比べ工事費は低く抑えることができ、宿泊定員も多くできます。ビジネスモデルは低価格で大量供給になるため、供給過多になると価格競争に陥ります。そしてパンデミック対策にも課題が残り、リスクを伴います。

 

 一方、ホテル・旅館は小規模であっても、大規模ホテルにはない特色を作りだすことが可能で、差別化できれば事業性を高めることができます。 

 

 事業性は立地の他、運営方針・スペース・ホスピタリティによって左右されます。

 それでは、もう少し詳しく見てみましょう。

ホテル・旅館・簡易宿所の法令上の違い

 では、旅館・ホテルと簡易宿所の違いの決め手は何でしょう?

  旅館業法で定義されています。客室を個室と多数人室(相部屋)の床面積を比較して、個室の床面積の方が多ければ旅館・ホテル、多数人室の方が多ければ簡易宿所になります。

 個室と多数人室が併設されるケースがあります。 

□旅館業法上の違い

 旅館営業に関わる主な法律は3つあります。

 ・旅館業法

 ・建築基準法

 ・消防法

です。

 この他に自治体で定められた条例があります。

 

 旅館業法は1948年に公布され、宿泊施設の構造の違いによって、ホテル・旅館・簡易宿所に区別されていました。ホテルは洋室、旅館は和室と。しかし、高度経済成長を迎え生活スタイルの洋風化が進み、客室を和室と洋室に区別することは現実的ではなくなりました。

 国の観光産業の成長戦略と併せて2018年に旅館業法が改正され、ホテルと旅館は統合されて、旅館・ホテルになり、簡易宿所と区別されることになりました。

 

 旅館営業を始められる方から、「旅館の営業許可より簡易宿所の方が取りやすい。」のではと、ご相談を受けることが多々ありました。旧法であれば確かに営業スタイルによって整える設備が違い、規模の問題が生じていました。簡易宿所<旅館<ホテルの順で難しさがありました。しかし、現行法では実際には旅館・ホテルと簡易宿所では施設の構造に差がある程度で、規模の差は解消されました。

  

 旅館・ホテルと簡易宿所の構造(施設の造り)について、詳細は各自治体の条例でそれぞれ定められています。

 東京都23区では総じてホテル・旅館はベッド形式は「客室の構造部分の合計面積」(自治体によって定義が異なりますが、クローゼットを除く客が入れる部分)が最低9㎡、布団スタイルであれば7㎡+布団収納になります。

 それに比べて簡易宿所は3㎡から可能になります。

 

 客室定員は「客室の有効面積」(客室からクローゼット・バス・トイレ・洗面等を除いた部分)旅館・ホテルは一人当たり3㎡、簡易宿所は1.5㎡になります。

□建築基準法上の違い

 建築基準法では、ホテル・旅館・簡易宿所の区別はなく、全てホテル等の用途になります。

 従って、簡易宿所からホテルに変更する場合やその逆も、規模や階数によらず用途変更の確認申請は必要ありません。

 

 建築関連では建築基準法の他に、都道府県で定めた建築基準条例等があります。そこに特殊建築物(住宅と事務所以外)と宿泊施設について定められています。

 東京都建築建築安全条例では、宿泊施設のらせん階段の禁止や行止り廊下の禁止などがあります。そして、簡易宿所には窓先空地が必要になります。窓先空地は避難時に玄関の他に、宿泊室の窓から避難経路を確保するもので、窓が道路に面するか通路幅が確保された敷地の空地が必要になります。これは共同住宅にも定められていますので、共同住宅から簡易宿所に用途変更する際の障害にはなりません。

 

 そして、旅館・ホテルには窓先空地の定めはありません。従って、建築の面からみると簡易宿所の方が条件は厳しいといえます。

□消防法上の違い

 消防法では、ホテル・旅館・簡易宿所に差はなく、同じ分類になります。消防設備の設置条件に差はありません。

 

 簡易宿所の場合、多数人室が大きくベッドの配置によって部屋の入り口までの見通しがつかない場合は、避難ルートを示す緑色の誘導灯の設置が必要になります。

 一方ホテル・旅館のように客室内で入り口が明確な場合においては、消防署の判断によります。消防署によって、客室内に設けることや、誘導灯に代わって蓄光塗料によって薄暗闇でもほのかに光る誘導標識でもよい場合や、誘導標識を求めない場合もあります。地域の実情に合わせているようです。

 

 自動火災報知器の設置について、収納の扱いに指導の差があります。収納内に棚板があって人が立ち入れない場合は不要とする場合や、シューズボックス内にも求められる場合もあります。

 カプセルベッドの場合は、カプセルごとに自火報感知器が必要になります。 

□採光面積の基準が違う

 旅館業法と建築基準法にはそれぞれ採光について基準が示されています。

 しかし、両者の算定基準は異なります。旅館業法の場合、客室の有効面積の10分の1以上の窓面積を必要とします。一方、建築基準法は周辺環境の実態に応じて算定式が定めれ、係数が左右します。たとえは3階建ての1階の隣地側と3階建ての3階の道路に面する部屋では、窓の大きさが同じでも、有効採光面積は異なります。

 

 極端に言えば、建築基準法で居室(一般に継続して過ごす部屋)に認められず、納戸になってしまう部屋も、旅館業法の採光基準を満たせば客室にできてしまいます。その逆もあります。


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